労働の搾取か? 廉価な労働力目当ての海外展開

日本の企業に限らず、特に工場で生産するようなビジネスモデルの企業は、日本から中国、中国から東南アジアと生産拠点を移していきました。

理由はいくつかあると思うのですが、そのほとんどは既存の海外拠点の人件費が高騰し、利益が減ってしまったから、という理由だと思います(他の理由についても、詳しく解説します)。

より人件費の安い国に工場を作れば、その分コストが下がるというのは、すごく分かりやすい理由ですよね。

労働の搾取か?

しかし、この安い賃金を求めた海外展開を指摘する人もいます。

生産するのは同じ商品なのだから、業務内容も同じなはず。では、人件費が安い国に行っても同一労働に対しては同一賃金を支払うべきではないか。だから途上国はいつまでも途上国を脱却できないんだ!という指摘です。

ごもっともな指摘ように思えます。日本国内では同一労働同一賃金が叫ばれ、重要な政策指針の一つです。

同じ仕事をしているにもかかわらず、国が違うだけで賃金が大きく異なって良いのか?そう思いませんか?

しかし、この考え方は少し危険です。もしこれが世界中で強制されたら、途上国はより途上国を抜け出せなくなりますし、とんでもないインフレも起きるでしょう。

それを説明していきたいと思います。

技術を移転する海外投資

前述したように、途上国に外国企業が海外投資をする理由が、安い人件費を求めた場合だとします。

単純に考えると、もし同一労働同一賃金を国際的にも適用しなければならなくなるのであれば、こういった企業は途上国に投資せず、既存の工場設備を拡張、効率化するためにその資金を使うことになるでしょう。

そうすると、本来生まれるはずの雇用が生まれなくなります。またここが非常重要なのですが、海外投資はその投資元の技術も持ち込みます。この技術も途上国は得ることが出来なくなるのです。

技術が移転されなければ、途上国が生み出す付加価値を高めることは出来きなくなり、より途上国を抜け出せなくなるのです。

インフレが起きる

インフレーションとは、ものの金額が高くなることです。例えば飲み物のペットボトル一本が100円だったのに、同じペットボトルが150円になってしまったら、これはインフレーションです。

例えば、人口2,000人の村に1,000人を雇う工場が出来たとします。工場ができる前は村人1人が1ヶ月10,000円を働いて稼いでいたとしましょう。

そして、工場は1人1ヶ月分こ給料として100,000円を支払ったとします。

その村でお米を買う場合、工場ができる前は1キロ100円で買えていました。では、工場が出来た後、お米の値段はどうなるでしょうか?

単純に考えれば、その村のお米の値段は高騰します。

もし、それ以外に車やバイクなどの高価なものが市場に出回っていれば、その工場労働者はそのバイクを買うでしょう。しかし、途上国には国に付加価値の高い製品がそもそもないので、急激に給料を上げてしまうと、お米等の必需品が物価高騰の煽りを受けてしまう、という極めて不健全な経済が回り始めます。

そうすると月収10,000円の村人の生活は苦しくなります。

こうして外資系工場とその他で働く人の間に貧富の差が拡大します。

貧富の差が拡大すると、治安が悪化し、暴動が起きてしまいます。

現地水準の給料での雇用が吉

途上国に海外展開する際は、以上のようなことから、原則現地水準に合わせた給料にする方が良いです。

賃金の安さを売りに、海外から自国に産業を持ち込みたいと考えている途上国はたくさんあります。

国を跨いだ同一労働同一賃金は理想論です。外国企業を誘致し、産業を育成しながら、徐々に賃金レベルを国単位で上げていくことが、途上国脱却への一番の近道だと思います。

最新情報をチェックしよう!