【まとめ】現代貨幣理論(MMT=Modern Monetary Theory)について

  • 2021年6月21日
  • 2021年7月18日
  • その他

「どんどんお金をばら撒けばいい!」

「デフレなんだから!」

「そうしないと景気が回復しない!」

こんなことを聞いたことはないでしょうか?実は、これらのコメントは「現代貨幣理論」という経済理論が根拠となっています。では現代貨幣理論(MMT)とは一体なんなのか?今回はMMTについて書いていきたいと思います。

現代貨幣理論(MMT=Modern Monetary Theory)とは?

まず、私が参照した書籍が以下の3冊です。

特に1冊目は簿記的に解説されていて、個人的にはすごく読みやすかったのでおすすめです(金額も安いので、、、)。2冊目はボリュームはあるものの、身近な体験談を交えて書いているので、親しみやすかったです。

さて、目次に戻って、現代貨幣理論(MMT)とは、ケインズ経済学の流れを組む経済理論です。ケインズは全員が雇用されている完全雇用状態が有効需要を生み出し、それが経済を発展させると論じました。この完全雇用のために政府は公共政策を行うべきであり、ここから「赤字財政がその国の成長の源である」という考えが登場します。MMTは1990年代より提唱されてきた理論です。

MMTの提唱者は紹介したMMT現代貨幣理論入門の著者であるラリー・ランダル・レイさんステファニー・ケルトンさん(NY州立大学教授)が有名です。

日本人ですと、中野剛志さんや三橋貴明さんなどが有名です。

借金が国民の預金を生み出す

「信用創造」と言う考え方なのですが、以下のような図で考えてみましょう。

ある銀行に3人が100万円ずつ預金しているとします。
この時、銀行には300万円の預金が集まっています。

ここで、銀行が100万円を貸したとします。単純に考えれば300万円の原資から100万円が貸し出されたので、銀行には200万円しかお金がないように思われます。これが預金からローンが生まれたと言う考え方です。

しかし、本当にそうでしょうか?

Aさん、Bさん、Cさんが100万円を引き出したい、となった時にはいつでも100万円が引き出せますし、借金をしたXさんもいつでもその100万円を引き出せます。もちろん全員が同時に預金を引き出せば、そのお金を銀行が全て支払うことはできませんが、信用上は銀行の残高は400万円になっているのです。

物々交換を回避するために始まった貨幣の歴史ですが、このローンによって対する預金が生み出される信用創造によって貨幣の実質的な量が膨れ上がったのは言うまでもありません。

国の借金は民間の預金・増税は民間の預金減

では国家単位で見るとどうなるのでしょうか?

例えば国から給付金が支払われたとしましょう。

国が給付金の財源を確保するために国債を発行すると、民間銀行がその国債を買い入れます。

国は現金を国民に給付し、給付された現金は民間銀行に預金されます。

これにより全体のプラスマイナスがバランスします。

つまり国の借金が民間銀行の預金になって、その預金によって国債が買われているような図式になっています。

さらに、アベノミクスで行われたような国債買入の金融政策を日本銀行が行うと、民間銀行の国債は日銀当座預金に振り替わります。

逆に税金を徴収することは、この動きと真逆です。せっかくの財政出動で潤った国民の預金を減らしてしまいます。

加えて、金融政策のみでも上手くいかないのではないか、と言われています。

というのも、アベノミクスで行った「異次元の金融緩和」により、本当は日銀当座預金を原資に銀行の融資が民間に行き渡るはずでしたが(行き渡っていたところもあると思いますが)、融資が通る優良企業(富裕層)が旨みを吸い上げ、それ以外の民間にはお金が落ちなかった(トリクルダウンが起きなかった)、と言われています。

 

仕分けの部部の以下の解説動画がすごくわかりやすいので、参考までに載せておきます。

YouTube

近年、注目されている賛否両論の「MMT(現代貨幣理論)」を、「簿記」で検証してみました。常識(主流派経済学)とMMTは、…

プライマリーバランスの黒字化は幻想?

2021年には日本の国債は1,200兆円を突破しました。

「借金が1,200兆円ってやばくない!?」

確かに数字だけ見ればやばいです。日本の2020年度の国家予算(一般会計)は約102兆円、うち税収は約64兆円です。

年収が640万円の家庭が1億2000万円の借金をしようとするのであれば、普通の銀行ではそもそも借入審査がおりないでしょう。

世界各国の財務省のボスである国際通貨基金(IMF)は借金をこれ以上増やさず、税収で歳出を賄おうとするプライマリーバランスの黒字化の重要性を各国に提唱しており、日本ももちろんその方針に則って、日本の政策を決めています。

しかし、2020年度も予算と税収の差額38兆円は借金であり、プライマリーバランスの黒字化とは程遠い状況です。

ではプライマリーバランス黒字化を本気で目指していたら?

実は、プライマリーバランスの黒字化を達成した国家が2つあります。ギリシアとアルゼンチンです。

そのギリシアとアルゼンチンは今、財政破綻しています。

プライマリーバランスを黒字化することは一見まともな政策に見えますが、達成は地獄の入り口かもしれない、とMMT論者はいいます。

国債は返済しなければならないのか?

日本の国債の保有者は財務省によれば以下のようになっています。

44.7%が日本銀行の保有です。金融政策で国債の買入を行えば、さらにその比率は高まります。

ではこの国債は返済されているのか?というと実は長年返済されていません。

日本は借金を返済せず、買い換えし続けています。

むしろ2020年は税収に加えてさらに国債を発行してコロナ禍の日本経済を支えています。

国は税収を得ていますが、それを国債の返済に当てるのではなく、ほぼ100%別の予算に注ぎ込んでいる、という状態であるのです。

またこの国債ですが、円建てである、ということも非常に重要です。

円建てであるということは、いざ借金を返済しなければならなくなった時、例えば5,000兆円を日本銀行が発行すれば返せてしまうんです。この表を見ると、海外からの借入が13.3%となっているので、不安に思うかもしれません。アジア諸国は同様に借金を抱えていますが、多くはドル建てや円建てです。自国の通貨を増刷しても、対ドルや対円でレートが安くなってしまっていれば、どれほどの通貨になるか想像もできません。しかし日本は1,200兆円を刷ってしまえばそれで解決です。

インフレーションの重要性

日本はデフレの状態が続いています。

バブルが弾けてから20年が失われたのは、財政出動が甘かったのが原因ではないか?とMMT論者たちは指摘しています。

確かに政府はインフレ率の目標を2%に設定していますが、それが達成されたことはありません。

インフレ率2%というのは簡単にいうと、今年100円で買えたおにぎりが、来年は102円出さないと買えなくなる、ということです。

インフレが起こると、預金の価値が年々下がっていくので、国民も預金せずに投資や購入にお金を回すようになります。

国家が財政出動を大胆に行い、国民のもつ預金を増やせば、インフレ率が目標値に達して、経済が勝手に回り出す、とMMT論者は考えています。

インフレ率で国債の量を調整

もちろん財政出動を際限なく行えば、円の価値が暴落して大変なことになります。

では、国の借金をいくらでも増やして国民に還元すれば良いのでしょうか?

MMT論者はそのような暴論を言っているように見えると思います。

確かにMMT論者は具体的に金額ベースでどれくらい国債を発行すれば、というような論調ではありません。

もちろんシミュレーションなどを示す場合もありますが、ゴールは具体的な金額ではありません。

MMT論者は気にすべき指標はインフレ率だと言っています。国がインフレ率2%を目指すのであれば、そのインフレ率に達するまで国債を発行し、財政出動を続けるべきだと。

MMT論者を否定する方は、「そんなことをしたらインフレがとんでもないことになる!デフォルトが起こる!」というのですが、インフレ率が目標値なので、そこは議論が噛み合っていない感じがしますね。。。

目指すべきは完全雇用

インフレ率は重要な指標の一つではあるんですが、ただ国民が豊かになっている指標としては、完全雇用が最も重要な指標であると考えています。

完全雇用を達成するために、特に不況期において就業保証プログラム(Job Garantee Program)をやる、というのがMMTの考え方です。

このJGPで雇用された方々の賃金が最低賃金となり、優秀な人はそこからより高い賃金で引き抜かれるという好循環が生まれる、という考え方です。

日本政府のMMTに対する反応

日本政府の反応

では日本政府はMMTに対して、どのような反応なのでしょうか?

もちろんIMFの示す指針に向かってプライマリーバランスの黒字化を目指しており、MMTに対しては反対する姿勢であることが伺えます。

しかし、日本政府も日本のような先進国が自国通貨建ての国債ではデフォルト(財政破綻)は起こり得ないということをS&Pやムーディーズなどの格付け会社宛の書簡にて宣言しています。

またプライマリーバランスの黒字化を目指して以降、一向に改善する方向には向いていないので、「目標に目掛けて頑張らなければ!」としつつも、実態は理解しているのではないかと思います(この辺りは次の記事で解説したいと思います)。

日本の法律(財政法第5条)

法律的にも、際限なく国債を発行できないよう、以下のようなルールが定められています。

財政法第5条: すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借入については、日本銀行からこれを借り入れてはならない。 但し、特別の事由がある場合において、国会の議決を経た金額の範囲内では、この限りでない。

つまり、日本銀行が直接国債を買うことができないのです。国債を買うのはあくまで民間のパワーを頼ることととしており(市中消化の原則)、必ず民間の銀行や生命保険会社などが購入しなければならないことになっています。

後半の但し書きも、基本的には国債の借替のみに国会の議決が下りている状況です。

MMT論者の見方

なぜ日本政府がMMT論者に反対するのか?

それは、増税(特に消費増税)を続け、今までプライマリーバランスの黒字化を推し進めてきた政府が、MMT論者の正論を受け止められないからだ、プライドの問題だ、と言っています。

個人的には本当にそうなのかな、、、と思うところではあるのですが、、、

 

以上、MMTに関する簡単な解説をしました。

読者の方は「MMTについて、あなたはどう思うのか?」と聞きたいと思います。

私は基本的にMMTに対してはニュートラルです。

この記事はかなりMMT肯定寄りに書いたつもりですが、もし私が判断できる立場にあるとして、MMTを採用して国策を進めていくべきなのかどうかは正直悩むと思います。

それは色々な批判も出ているからです。多くはMMTに対して理解が十分でないために出ている批判のように感じましたが、いくつかは確かにな、、、と思うものもありました。

次回はそんなMMTに対して出ている批判を書いていきたいと思います。

 

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