【徹底解説】経常収支についてわかりやすく語りたい!

途上国に駐在では、スタッフが少ないことがほとんど。日本人は1人、という場合も少なくありません。

本社には赴任地のレポートを求められます。自分のビジネスのことはわかっても、その他の経済事情や制度情報はちょっと…という方も多いのでは?

今回は経常収支について徹底的にわかりやすく書いていきたいと思います。

経常収支とは?

経常収支は国際収支の一部であり、簿記で言う国の経常利益(損益計算書=PL:Profit and Loss)です。

ん?経常利益って企業会計じゃない?簿記じゃない?

と思った方もいらっしゃるでしょう。大学でも経済学と商学が分かれていて、それぞれが混じり合うことなく議論されている感がありますが、経済学も商学もどちらのお金のことを話していますよね?なので、すごく感覚が近いんです。

自分は経理をやっていたこともあるので、これがわかったときに経常収支がすごく腑に落ちました。

国として海外からどれだけ収入を得ているか(もしくは支払っているか)、というのが経常収支です。

経常収支の計算式ですが、以下のようになっています。

貿易・サービス収支+第一次所得収支+第二次所得収支=経常収支

それぞれの項目別に中身が何なのか見ていきましょう!

貿易・サービス収支

企業の場合、経常利益の中に営業利益(本業での利益)がありますが、貿易・サービス収支は国の「本業」の収入と考えてください。

モノの輸出入はわかりやすいですが、「サービス収支って?」と思われる方、いらっしゃいませんか?

サービス収支の主要分野は国際輸送です。貿易収支は黒字の日本もサービス収支は黒字化できていませんが、サービス収支分野において、日本の稼ぎ頭になっているのは旅行と特許などの知的財産にかかる収入です。

第一次所得収支

第一次所得収支は投資からの利子や配当金です。

企業会計でも特殊な場合を除いて、この配当金を営業利益には含めないですよね?

実は、日本は世界一の対外資産を持っています。その額なんと1,097兆円(2019年時点)です!!今米国株投資なども流行っていますが、こういった証券投資だけで半額の500兆円に上ります。

対外負債も733兆円(うち対日本への証券投資が396兆円)あるのですが、資産と負債の差額である純資産は364兆円です。

(この辺りは金融収支の説明で詳しく解説していきたいと思います)

この海外投資が莫大な利子・配当が毎年入ってきていて、その額なんと約20兆円です。

第二次所得収支

続いて、最後の構成要素、第二次所得収支は副業と考えてください

第二次所得収支の主な構成要素は、政府の無償援助、駐在員給与、出稼ぎ労働者の送金などがあります。

日本はこの項目がむしろマイナスですが、バングラデシュは中東への出稼ぎ労働者が多数おり、彼らがバングラデシュにいる家族向けに多額の送金をしています。その額なんと1.5兆円です!!

貿易・サービス収支(本業)+第一次所得収支(投資の配当)+第二次所得収支(副業)=経常収支

説明を端折ってしまっている部分もあるので、もっと詳しく知りたい!という方は是非以下の日本銀行のリンクにある細かい項目表もご確認ください。

すごく面白いなと思ったのは、公務員の給与は第一次所得収支で民間の駐在員給与は第二次所得収支だということです。

皆さんもご覧になっていただくと何かしら発見があるかもしれません。

経常収支が赤字はヤバイ?

経常収支の赤字はまずいんでしょうか?

結論から言うと、状況によります。

大事なことなのでもう一度言うのですが、経常収支は企業で言う経常利益なんです。経常利益が赤字だと必ずまずいと言えるのでしょうか?おそらく財閥企業や古くから創業している企業の経常利益が赤字であったらそれは倒産に向かっているかあるいは何か一時的な要因で赤字になっていることが考えられます。

例えば、ソフトバンクグループやアマゾンなどの新興メガ企業は滅多に経常利益が黒字になりませんでした。赤字を続けていました。なぜでしょうか?それは黒字化して株主に配当を配るよりも、自社の事業や資産、企業買収にお金を使い、あえて赤字を選んでいた、と言う戦略があります。

もしその企業に魅力があり、投資をしてくれる投資家がいる、借金をさせてくれる銀行があるのであれば、赤字でも問題ないんです。

赤字を続けても将来黒字化して返してくれる、もしくは一気に成長して保有する株が一気に上がるような未来を願っていると言う状況です。

これは国際収支にも同じことが言えるんです。

例えばバングラデシュはねん6%以上の成長を15年以上続けています。新型コロナウィルスの影響で2020年こそ落ち込んでいますが、2019年度は脅威の8%成長をしました。

これだけの経済成長を続けている国は珍しく、企業で言うのであれば10年前のGAFA級(Google ,Apple ,Facebook,Amazonの略)の成長速度です(すみません、贔屓目で言いすぎたかもしれません)。

なので、世界銀行やアジア開発銀行、日本の国際協力機構(JICA)などがこぞってローンを与えています。

これでインフラなどを整備して、一気に経済成長をする目論見です。

もちろん将来的にはこの借りたローンは返済します。でも今は借金をしてでも、赤字を慣れ流してでも国内整備などを輸入し、投資をして、先進国に向けて一目さんに駆け上がる、と言う状況です。

確かにバングラデシュは経常収支が赤字です。ですがローンに支えられ、国は活気そのものです。

「経常収支の赤字≠ヤバイ」と言うことがお分かりいただけたかと思います。

ちなみに「貿易・サービス収支が赤字≠ヤバイ」と言うこともお分かりいただけると思います。

経常収支の1項目でしかないわけなので、貿易・サービス収支だけでその国を語れるわけがないんです。

国際統計で一番ヤバさが出るのは?

では、国際統計を見る上で、どの項目が鍵になるのでしょうか?

もう一度、しつこいくらいに言いますが、経常収支は企業で言う経常利益なんです。

経常収支しか見ていない、と言うのは、企業の損益計算書しか見てないのと一緒です。

企業の業績を見る上で、もう一つ重要な指標はなんでしょうか?

それは貸借対照表(BS:Balance Sheet)です。

国の貸借対照表を見ないと、国の状況が本当にどうなっているかは分かりません。

さて、ここまで理解いただいたところで質問です。

企業はどうやって倒産しますか?

多くは支払いが焦げついて倒産しますよね?

支払いはなぜ焦げ付くのでしょうか?もちろん収入がなく、借金ばかりだという状態であると言う状態が倒産前の基本ステータスだと思いますが、であればアマゾンは潰れていたはずです。でも潰れていないのはなぜか?

キャッシュフローがちゃんと上手くいっていたからです。逆にキャッシュフローが止まると、どんなに資産があって負債がすくなくても倒産します。

もちろん短期的な負債を多くしないと言うこともありますが、いざと言うときに現金化できる資産(流動資産)をどれだけ持っておくか、と言うことが非常に重要なわけです。

国で言う流動資産は何かと言うと、外貨準備高なんです。

と言うわけで、外貨準備高についても書いていきたいのですが、今回は経常収支の回ですのでまた次回にしたいと思います。

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最後まで読んでくださり、ありがとうございました。また次回もお楽しみに。

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