【徹底解説】国際統計を見るときに間際らしい指標たち

途上国に駐在では、スタッフが少ないことがほとんど。日本人は1人、という場合も少なくありません。

本社には赴任地のレポートを求められます。自分のビジネスのことはわかっても、その他の経済事情や制度情報はちょっとという方も多いのでは?

この記事では統計データを見るときに、まどろっこしい指標をまとめて解説していきたいと思います。

「名目」と「実質」

名目GDPと実質GDPの違い

名目GDPや実質GDPという言い方を時々耳にしませんか?

耳にしない方も、意味の違いは是非覚えていただきたいです。

GDPについて、そもそもよく分からん!という方は以下の記事も見ていただければと…

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さて、GDPとは国内で生産される財産や付加価値の合計だ、という話をしました。

「名目GDP」というのは、ただ単純にその金額を算出して足し上げただけです。

では「実質GDPは、というとある基準年から物価変動を省いた数値で算出されます。

?????という方、分かりますよ!本当にわかります。自分もそうでした。なので、もう少し具体的にお話しします。

例えばAという国が、リンゴとみかんだけを作る国だったとします。そして2000年と2010年に以下のような生産量であったしましょう。

そうすると、2000年の名目GDPは5,000になりますよね?次に、2010年の名目GDPは11,000になりますね。

ここから実質GDPの話になります。もう一度言いますと、実質GDPとはある基準年から物価変動を省いた数値です。

今回基準年を2000年としますと、リンゴは200円から150円に物価が下がっています。逆にみかんは150円から200円に物価が上がっています。

物価変動は省かなければならないので、基準年の2000年に合わせて、リンゴは1個200円として、みかんは1個150円として改めて計算しなければならない、ということです。それで計算しなおすと、10,000という金額が出てきます。

もちろんA国という国は存在しないので、これほど簡単に実質GDPは求まりません。

基本的には商品分野ごとに物価の推移を確認し、物価変動を算出して、それぞれの分野にかけていくような作業をしています。

名目と実質の用途 ~実質GDPは独り歩きしない!~

ではどのようなときに名目と実質を使い分けるか、というと「他国と比較する場合は名目」「国内で比較する場合は実質」という仕切りが一般的のようです。

国際比較する場合にもインフレ(物価上昇)が激しい国ですと、必ずしも名目GDPが実態を反映できていない場合もあります。イランとかベトナムはそうだった気がします。が、めったにないですし、私は実質GDPで国比較をしたことはないです。。。もししたことある方は是非教えてください。

実質GDPは特に物価をある基準年から固定するので、同じ国の過去との比較において本当の成長が見れます。リンゴとみかんの例に戻りますが、作った数がその国の生産力だと思いますし、物価で高くまたは低く評価されてしまうのは、少し実態からそれてしまっている気がしますよね。

それから、時々ニュースなどで「実質GDPは~」というような言い方をしています。

説明したとおり、実質GDPは必ず「基準年」が必要なんです。

日本の場合はほとんど物価も変わっていないので、実質と名目にそこまで差はありません。しかし、「実質GDP」という言葉は本来独り歩きしてはいけないんですよね。

もちろん、わざわざ基準年をいう時間がもったいない、というのもあるのかもしれませんが、、、

「名目」と「実質」英語でなんて言うの?

以下の記事で国際連合(UN)のGDPのデータを調べました。

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この回では、無心に「GDP and its breakdown at current prices in Dollars」を選んでいただきましたが、これはcurrent prices」が「名目」の意味だからです。直訳すると「現在価値」になりますね。

「実質」は「constant 2015 pricesとなっています。直訳すると「そのまま2015年の価格」という意味です。UNのデータでは現在時点で2015年を基準年として実質GDPを算出していることがわかります。

日本語で「名目」「実質」などというとわかりにくいですが、英語だとわかりやすい気がしませんか?

GDPとGNI

GDPについては散々確認してきました。

GDPはGDPとは国内で生産される財産や付加価値の合計でした。

GDPとGNIの違い

GNIとは国民総所得(Gross National Income)の略です。

GDPは「国」という単位に注目して算出された数字ですが、GNIは「国民」という単位に注目して算出されます。

何を言っているかわからないと思うので、テニス選手を例に具体例を出したいと思います。

例えば、日本一有名な男性テニスプレイヤー、錦織選手。彼は海外でテニスをしてとんでもない賞金を稼いでいます。

とはいえ、海外での稼ぎなので、日本のGDPには含まれません。

しかしGNIになると、日本国民である錦織選手が海外で稼いだ賞金はGNIとしてカウントされます。

逆に、2010年にスペインの超強豪、ナダル選手は楽天オープンで優勝しました。

もちろん日本で開催された大会なので、ナダル選手の賞金は日本のGDPに含まれます。

しかし、ナダル選手はスペイン人なので、GNIにはその賞金は含まれません。

バングラデシュの例も挙げておくと、バングラデシュは中東を中心に多数労働者を派遣しています。

労働者たちは外国で稼いだお金を節約してバングラデシュ国内に向けて送金します。この金額は1兆5,000億円にもなります。

この出稼ぎ送金はというと、GDPには含まれませんが、GNIには含まれます

逆にバングラデシュには800人~1,000人程度の日本人がいます。日系企業で働いている方もいらっしゃるでしょう。

彼らが働いて得た給与はGDPには含まれますが、GNIには含まれないことになります。

GDPとGNIはどちらを使うべき?

日本では国内景気がよりわかりやすいGDPが指標としてよく使われています。

しかし、途上国経済を測る指標はGNIを見る場合が多く、また下の記事によればアベノミクスにより海外からの収入が増大したことなどを背景に今後はGNIが指標として重要なのではないか、との議論が展開されています。

グローバル化が進むにつれ、GNIという指標は重要になってきますし、途上国で働く場合はGDPよりも重要な指標として考えられるので、どちらも意味を理解して活用できるとよいと思います。

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